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バレエミストレス真下恵による「ハコ噺」第12話

Noismバレエミストレス真下恵が『箱入り娘』創作の日々の中からお届けする小噺、「ハコ噺(ハコバナシ)」。
ある時は演出振付家の隣でメモをとり、またある時には音響卓を操作して音を出し、さらには舞踊家たち一人一人に客観的視点からアドバイスし、《かかし王子》の楽譜を片手に拍子を数え…リハーサルを見つめ続けてきたバレエミストレス。
8月1日まで続く公演の様子を、ミストレスだからこその目線で時折綴ります。
 

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「ハコ噺」第12話 2015.07.24


今回のハコ噺も前回に引き続き、メンバーについてのお噺です。
 

◇池ケ谷奏◇
「・・・芋ですか?」
そうです、今回の彼女の役名は「娘の侍女:お芋(おいも)」です。
「侍女」「お芋」このふたつのキーワードから物語におけるその役の立ち位置、役割、キャラクターを自分で生み出していかなければなりません。
Noismにおいて舞踊家とはただ踊っていればいい存在ではありません。演出振付家の意図をくみ、想像力を働かせ、最終的に自分の身体で表現する。
足の踏み方ひとつでそのキャラクターの全てを表現できるほどに突き詰め続けなければなりません。
小さな頃からクラシックバレエを習い、Noism2で研修生として経験を積み、2年前からNoism1に上がった彼女にとって、「お芋」という役はひとつの壁でしょう。
精神的にもですが、身体的にもクラシックバレエで培ってきた身体には、丸めた背中で腰をおとしてすり足で走るのは苦しい体勢です。
しかし、制約された身体の中で最大限のパフォーマンスを求められることで、またひとつ違う次元に進めるものです。今回の「お芋」と向き合うことで、Noismの舞踊家として、また一人の人間としてさらに成長することでしょう。
 

◇吉﨑裕哉◇
Noism作品の特徴のひとつとして、難しいリフト(男性が女性を持ち上げること)が多いことがあげられると思います。
新潟での公演には、市内の高校ダンス部の学生さんたちも多く観にきてくれますが、アフタートークでも「どうやっているの?」等リフトに関する質問は時折あがります。
特に、助走のないところから浮くようにフワッと女性を高くリフトすることは相当な力とテクニックを要します。ただやみくもに持ち上げてもあがりませんし、なにより見た目が美しくありません。
自分の重心、相手の重心、相手への触れ方、力の入れ具合、タイミング、全てがうまく合ってはじめて、まるで女性に羽がついたかのように軽くあがります。
彼は恵まれた体格、パワーに加えてそういったセンスのある舞踊家です。とはいってもまだまだ掘り下げなければならないことは山積みですが、このセンスがあるかどうかはとても重要です。
また、幼少の頃から稽古を続けてきた女性陣に比べてクラシックバレエ経験が浅いため、バレエミストレスの私にとっても、いかに彼の身体のラインを美しく魅せられるようにするかは今後の最重要課題です・・・。
しかも今回の彼の役名は「イケ面」。より美しい身体・動きの魅せ方の探求は続きます。
 

さて、今晩はいよいよ新潟凱旋公演初日です。
「なんか、ニートの背中筋肉ついて逞しくなっちゃったな・・・。」
と、ゲネプロ(本番さながらの通し稽古)で演出振付家の金森穣がつぶやくほど、舞踊家の体つきからしてまず違います。
新潟7公演、横浜6公演、金沢2公演を経て、確実に深く強度を増した『箱入り娘』ぜひお見逃しなく!
 

Noismバレエミストレス 真下恵

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