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Noism1『Liebestod−愛の死』『Painted Desert』新潟・埼玉公演

5/23から6/4にかけて、りゅーとぴあと彩の国さいたま芸術劇場で開催したNoism1のダブルビル公演。
 

金森穣が、18歳の頃から魅了されてきたワーグナー作曲の《愛の死》を用いて創る愛のデュオ『Liebestod-愛の死』と、
Noism2専属振付家である山田勇気が2014年にNoism2で初演した代表作『Painted Desert』を2本立てで上演しました。

公演前に公開されたいくつかのインタビューでも金森や井関が話してきたとおり、『Liebestod-愛の死』は、金森の25年の想いが詰まった渾身の新作。
対する『Painted Desert』は、研修生カンパニーであるNoism2が初演した作品を、Noism1がどのように踊り上げるかが注目されていました。
 

5月末に新潟で迎えた初日は、客席まで含めて息をのむようなすごい緊張感でした。
両作品とも、幕が降りると同時に「ブラボー!」の声が。
 



 
 

篠田昭新潟市長も駆けつけてくださり、終演後には舞台上で、今観たばかりの作品の感想と、Noismへの激励の言葉をいただきました。
 


 

新潟公演恒例のアフタートークでは、毎回、金森と山田の2人が登壇。
今回も客席から作品に関してさまざまな質問や感想があがりました。
 


 

▼「どうしても新潟で観たくて、東京からきました!」というお客様も。
「でも、正直なところこういった作品を観るのは初めてで、戸惑いも多かったのですが、正しい見方はあるのですか?」とのこと。
熱心に質問をされている姿がとても印象的でした。

 

首都圏はもちろん、京都や沖縄、さらには海を越えてヨーロッパなど、国内各地や海外からも“世界初演”を見届けようと新潟公演に駆けつけてくれる方がいらっしゃり、Noismのホームであるりゅーとぴあでの鑑賞を旅行も兼ねて楽しんでくださっている方が着実に増えてきたことを感じます。
中には、2014年の『Nameless Hands』スペイン公演を観て以来、Noismと井関佐和子のファンになり、年に1回新潟まで観に来てくださるスペインの方も。
公演3日目には「昨日の公演が忘れられず、もう一度観なければと思って来ました!」というお客様もいらっしゃいました。
もちろん、「今回はどんなものかな…」と、定点観測的に静かに見続けてくださる新潟の方もいらっしゃれば、友人に誘われて初めて来た、という方もまだまだたくさんおられます。
 

それは、設立から14年を経てこその厚みでもあり、ホーム新潟独特の空気感がここにはあります。
こうして様々な形で、Noismの作品を観ることに時間とエネルギーを費やして劇場に足を運んでくださる方がたくさんいらっしゃることは、ここ新潟から100年先を見据えて劇場文化の発展を願うNoismにとって、本当に励みになります。
 

▼『Painted Desert』のカーテンコールでは、今シーズン限りで退団するリン・シーピンへ、金森監督から花束のプレゼント。
台湾から単身新潟に移り住んで2年間。りゅーとぴあでは、これが最後のステージになりました。

 

そして翌週には、そのまま続けて埼玉公演へ。
Noism1としては今回初めて、彩の国さいたま芸術劇場・大ホールの舞台に立ちました。
舞台芸術に関心が高く、様々な作品を見慣れているお客様が多くなる首都圏での公演は、毎回新潟とは違った緊張感が漂います。
 

▼埼玉公演初日のカーテンコールには、『Liebestod―愛の死』の衣裳を担当してくださったISSEY MIYAKEの宮前義之さんも登場。

 

▼埼玉2日目の終演後には、俳優の八嶋智人さんをお迎えして、首都圏での公演では実に4年ぶりとなるアフタートークを開催しました!

 

八嶋さんはこれまでもNoismの作品をご覧くださっていましたが、今回も「感動して泣いちゃいましたよ」とおっしゃりつつ、
舞台人ならではの視点で、ご自身の経験も交えながら作品の感想をお話しくださいました。
そんな八嶋さんのお話しに、お客様も「うんうん」と強く頷いたり、思わず笑いがおきる場面も。
 
 

▼『Liebestod―愛の死』の象徴とも言える舞台後方に吊られた金幕。
作品後半、波打つ幕に感情の波を重ね、心動かされた方も多かったようです。

 

金幕と、真っ黒なリノリウムと、白い衣裳に身をつつんだ2人の舞踊家。舞台上はとてもシンプルな要素で構成された作品。
20分という短さながら、様々な想いが引き起こされる作品に「涙があふれた」という感想を数多くいただきました。
理屈ではなく、観る人の感性にゆだねられる部分が非常に大きな作品でもあるので、その日のコンディションや客席の位置によって、感想は本当に人それぞれだったと思います。
中には「なぜか入所中の96歳の母の人生を思えて、涙しました」という感想をアンケートでよせてくださった方も。
 
 

▼『Liebestod−愛の死』の通しリハーサル終了後に、楽屋で立ったまま互いの発見について語り合う井関と吉﨑。
今作のクリエーションでは、稽古以外にもできるだけ同じ時間を過ごし、多くの言葉を交わして、お互いの深いところまで手を差し伸べるような日々を重ねていました。

 

なお、アフタートークでも質問のあがっていた、『Liebestod』で使用した音源をこの場でお知らせしておきます。
Richard Wagner《Tristan & Isolde》Prelude & Liebestod
Chicago Symphony Orchestra
SIR Georg Solti
 

▼『Painted Desert』は『Liebestod』とは真逆の真っ白な世界。
箱庭のように四角く区切られた空間で、こちらも白い衣裳をまとった8人の舞踊家が縦横無尽に踊ります。
作品中盤で”ミスターロンリー”の曲にのせて中川と池ヶ谷が目を閉じて踊るパ・ド・ドゥに鳥肌がたった、という声もたくさん聴かれました。
一方で、同じシーンに「ここだけ現実から引き剥がされたように不思議な違和感を覚えた」という方も。

 

▼『Painted Desert』リハーサル後の山田とメンバー。

 

Noism1メンバーが金森以外の作品を踊るのは約6年ぶり。
「優れた作品と出会うことで、舞踊家達が未だ見ぬ自らの新しい可能性を発見し、表現してほしい」という金森の期待を背負い、山田勇気と挑んだ『Painted Desert』。
これは、山田がNoism2専属振付家に就任して初めてNoism2に振付けた作品でもあります。
アフタートークで初演時の創作意図について聞かれ、「当時のメンバー達を、できるだけ”その人がもともと持っているオイシイ使い方”をせず、妥協なくぶつかって、振付家として自分の創りたいものを純粋に創作していった」と語る場面もありました。
特に物語性のある作品ではなく、今回のような抽象的な作品であればなお、舞踊家その人が持っているキャラクターと身体的特徴、それらもすべて踏まえたうえで、そこから何を伸ばし、あるいは新たに見出し、飛躍し、どうやって舞台に立つかということが問われます。
あらためて、舞踊家として“作品の中で如何に生きるか”、1人1人の真価が問われる上演になりました。
 
 

今回の2作品の上演を経て、「全く異なる作品でありながら、この2作品を続けて観ることで共通する“何か”を感じる。そこには何か意図していたことが?」という声も複数きかれました。
作風やテーマ、アプローチも全く違いますが、金森と山田にとって「舞踊とは何か」という“原点”に向き合った作品であり、だからこそこの2作品を通してひとつの見地を見出す方も多かったのではないかと感じます。
 

▼彩の国さいたま芸術劇場での千秋楽のカーテンコール

 

本公演をもって、Noism1の13thシーズンの公演は終了しました。

8月からの新シーズンは、Noism初期の代表作『NINA―物質化する生け贄』の東アジアツアーからスタートです。
衣裳を一新しての新生『NINA』、7年ぶりの上演です。
他にも、新潟市内でのイベント出演等もありますので、ぜひご期待ください!!

私たちはNoismの活動を応援しています。