11月8日から11月16日にかけて、Noism2の中学校出前公演を行いました。
「全国でも唯一の劇場専属舞踊団である新潟発のNoismの舞台を、若い人にこそ多感な時期に観てほしい」という新潟市の文化政策のひとつとして昨年から始まったこの企画。
2年目の今年は、新潟市西蒲区の岩室中学校、南区の白南中学校、秋葉区の小合中学校の計3校へ伺いました。
いずれの学校も、Noismの活動拠点であるりゅーとぴあからは車で1時間ほど離れた場所にあります。市内中心地からは距離のある田園地帯で育った中学生たちは、今回の公演でNoismを初めて知ったという生徒がほとんどでした。
今回は、2011年に金森穣が振付けたNoism2のレパートリー『火の鳥』を上演。
開演前には、金森がどのような想いから『火の鳥』をつくったのか、簡単なストーリーや作品の生まれた背景をお話しました。
生徒の皆さんは公演が始まると一気に目の前の舞台にのめり込み、初めて目にする舞踊家の動きや演出に集中して鑑賞している様子が背中から伝わってきました。
中には、全身肌色のタイツに仮面をつけた姿の「火の鳥」が最初に躍り出たときに一瞬ざわめきが起こる学校もあり、素直な反応が印象的でした。
出前公演の会場になるのは、体育館。暗転も効かない限られた条件の中で、照明や音響を仕込みます。
体育館のフロア上に舞台がつくられ、普段の体育館とは違った雰囲気に最初は少し驚きながらも、初めて目にする舞踊家の鍛えられた身体や表現に多くの生徒が関心を示していました。
上演後には、岩室中学校では金森穣、白南中学校と小合中学校では山田勇気によるアフタートークも開催しました。
どの学校でも、事前の打合せでは「アフタートークで質問が出ないのではないか…」ということを心配される先生方が多かったのですが、そんな心配はまったく必要なく、生徒の皆さんから自発的に率直な質問が数多くあがりました。
たとえば、「毎日どのくらい練習をしているのですか」、「どのようなトレーニングをしているのですか」、「身体をやわらかくするためにどんなことをしているのですか」といった、舞踊家が日々どのようなトレーニングや稽古をしているかに関する質問が多く出ました。
「Noism2は、毎週月曜日のオフ以外、朝から晩まで舞踊に向き合う毎日」という答えに、驚きの声もあがっていました。
また、「観客に伝えるために工夫していることはありますか。」という質問や、「台詞がなく、身体ひとつだけで表現しているのに、こんなにも感情が伝わってくるのかと感動しました。」という感想も。
観ている人に伝えることは容易なことではありませんが、まず、表現する者が何を表現しているのかを自分で意識しなければ始まりません。
しかし、ここで難しいのは、ただ「こう表現したい」という思いをどんなに強く持っていても、観ている人に伝わるとは限らないのです。
たとえば泣いている場面でも、舞踊家がただ「悲しい」という感情を持って動いていてもそれだけで伝わるものではありません。
ともすると、その場面をただ説明しているような表現になりかねないこともあります。
常に第三者としての演出家がそれを外から見て、「ダメ出し」と言われる細かい修正や演出を加えていくことで、「観る人」と「観られる人」の間に伝わるものが生まれます。
舞踊家には、それを信じ、全身全霊、己の身体でそれに応えていく献身性が求められるのです。
この話は、舞踊家に限らず、中学生にとっても気づきの多い話題だったようで、大きく頷いている生徒(と先生)がたくさんいました。
今回の公演は、今シーズンから加わった4名の新メンバーも含む新生Noism2としての初公演でもありました。
プロをめざして研鑽を積む若い舞踊家にとって、自分たちよりも少し若い世代の観客に観られること、
そして、劇場外のそれほど環境が整わないところで、「自分の意志で公演を観に来たわけではない」観客の前で、
照明や音響に頼らずどれだけ自分の身体で勝負できるかが求められる学校公演は、よい経験になったことと思います。
今回上演した『火の鳥』は、12月に予定しているNoism2定期公演でも上演します。
学校公演を経てさらにひとつ成長したNoism2の姿を、今度はりゅーとぴあでご覧いただければ幸いです。
そして、今回の出前公演をきっかけに、一人でも多くの方が大人になってからも劇場へ足を運んでいただければ嬉しく思います。