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柳都会 第15回 平田オリザ×金森穣

「今ここ新潟で話を聞いてみたい方」をゲストに迎え、金森穣との対談を行うシリーズ企画「柳都会(りゅうとかい)」。
4月23日(日)に行われた15回からは内容をさらに充実させ、前半はゲストによる講義、後半はその講義にもとづいた金森との対談の2本立てで、“対話による公開講座”と題して開催しました。

 

15回目のゲストは、平田オリザさん。平田さんは、「現代口語演劇」という新しい演劇理論を打ち出し90年代の演劇界に大きな影響を与えてきた、日本を代表する劇作家・演出家です。現在は世界各国の劇場との共同制作、国内各地でのワークショップや演劇教育プログラムの開発等々、舞台芸術の新しい領域を切り拓き続けています。また、今年6月に予定しているNoismの最新作、劇的舞踊『ラ・バヤデール―幻の国』の脚本も担当していただいています。

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りゅーとぴあの能楽堂で開催した今回は、約170名近くの方々が参加。熱心にメモを取りながら聞いている方も多く、参加者の関心の高さが伺えました。

前半は平田さんによる講義で『新しい広場を作る』と題し、現代社会における劇場の役割について、日本の現状と平田さんの取り組みやお話しを伺いました。

 

「ヨーロッパにおいて、芸術の公共性とは、その時社会で課題になっている事を議論するためのきっかけをつくることであり、そこに住む市民が考える糸口を提供するのが公共劇場の役割である」とのこと。今年1月にドイツ・ハンブルグの歌劇場からの依頼を受けて東日本大震災を題材にオペラを創作した際の話なども交えつつ、諸外国と日本の「芸術」の認識を比較しながらのお話がありました。

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講義のなかで「“芸術”はダムや道路のように、明確な形として残るものではないため、“公共財”として作り続けることの難しさがある」としながらも「被災された方が100年前に作られた音楽に癒されているのをみればわかるように、いま私たちが作ったものが100年後の被災者の心を癒す可能性がある。だからこそ、創作することを止めてはいけない」と強く語る姿がとても印象的であり、参加された方々も深く頷かれていました。

 

他にも、日本で現在大きな課題となっている地域間格差について、経済や教育以上に“芸術文化”のほうがより地域間格差がより大きいこと、社会参画の出番を作るための居場所としての劇場や音楽堂が大きな役割を果たすのではないか等々、、、
芸術文化の置かれた現在の環境と、平田さんが考えるこれからの劇場のあり方についてのお話がありました。

 

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小休憩をはさみ、後半は金森との対談。

 

前半の講義を経ての金森からの質問に、平田さんが答えていく形で対談がスタート。話題は平田さん自身が大きく制定に携わり施行後4年が経過した劇場法について。平田さんは劇場法について「劇場とは創作だけを行う場ではなく、創作したものを蓄積するための場所であり、そのための専門家がいるべき場所。それを法律として制度化する必要があると思った」と話しながら、その手ごたえについては「これからの劇場の多くは劇場法を前提として企画が生まれようとしており、何らかの成果が見えるまでは20年はかかる」と現状を話していました。

 

このほかにも、日本の教育の中で演劇や劇場文化を教えることについて、「大学入試改革」などの話題を交えながら平田さんが実際の教育現場で感じていることや、演劇教育の必要性などを語りました。

金森自身が平田さんのお話を聴いて感じたこと、演劇界と舞踊界がそれぞれ抱えている課題など、舞踊と演劇の前線で活動を続ける二人の対談は、それぞれの熱い想いが伝わってくるようでした。

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金森は最後に「平田さんのお話は難しい題材を取り扱っているのにもかかわらず、とても分かりやすいし、感化されやすい。だからこそ今日伺った理論を持って我々が何をするのか。主体性を持って、自分に何ができるのか考え、何を背負って行動するかが大切」と語っていましたが、今回の柳都会が、参加された方々にとって社会について考え・行動するきっかけのひとつになれればと願っています。

 

そして、平田さんと金森のタッグで挑む最新作『ラ・バヤデール―幻の国』はまさに、我々が生きる今の社会に向けて考える糸口を発信する作品です。舞踊・演劇、劇場に興味がある方はもちろんですが、劇場に足を運んだことがない方にもこの機会にぜひご覧いただきたいです。

 

▼劇的舞踊『ラ・バヤデール―幻の国』特設サイトはこちら
http://labayadere.noism.jp/

私たちはNoismの活動を応援しています。