本日、新潟市長に宛てたNoism Company Niigataからの要望書を新潟市役所に提出しました。
この要望書は、金森の意見を含まないかたちで、金森を除いたメンバー・スタッフの総意として作成し、
現所属メンバー・スタッフの全員が直筆で署名したものです。
以下に要望書全文を掲載いたします。
新潟市長 中原八一様
日頃からの市政へのご尽力に、深く敬意を表します。
私たちNoism Company Niigataのメンバー・スタッフは、りゅーとぴあレジデンシャル制度に基づく芸術監督の任期更新とカンパニーの継続について、金森芸術監督が新潟市および公益財団法人新潟市芸術文化振興財団と何度も交渉を重ね、最終的に4つの課題と改善策を書面で提出(2025年11月20日)したこと、それがすべて受け入れらなかったことから、12月28日、苦渋の末に2027年8月末での第一期任期満了をもって退任する意向を決めたことは、事前に聞いていました。そのため、同日に新潟日報がデジタル版にて「金森穣さん退任意向、任期更新せず」(12月29日に朝刊)と報じた内容については、それぞれが冷静に受け止め、この意向を受けて、りゅーとぴあレジデンシャル制度に基づくカンパニーの今後の運営について、更なる議論が必要になるものと考えておりました。
ところが、翌12月29日付でりゅーとぴあのホームページに掲載された「金森監督への感謝と、そのレガシーを引き継いでいく決意を込めて」という新潟市芸術文化振興財団による発表は、私たちも事後にSNSを通じて知ることとなりました。「金森監督のご判断を尊重」という言葉を用いることで、Noism Company Niigataの活動は、2027年8月末をもって終了することとなると明言されており、対話の場すら設けられずに幕を閉じようとしていることに大きな戸惑いと落胆を覚えております。
そこで、ここにあらためて、私たちNoism Company Niigataのメンバー・スタッフの意志をお伝えするとともに、市長のご見解をお聞かせ願いたく、本書をお送りする次第です。
1.Noism Company Niigataは、ここ新潟での活動継続を望んでいます。
創造型の劇場では、歴史的にその土地で培われてきた文化・芸術を次の世代に継承していくことと同時に、同時代の芸術を創造することが重要です。既にそこにある需要に応えるだけではなく、将来、人類にとって普遍的な価値や公共財産となり得るような芸術を追求すること、それはある種の研究のようなものです。しかしながら、舞台芸術は「ナマモノ」であるが故に、絵画や文学のように後世あらためてその価値が評価されるということが難しい面があります。加えて、物流や人口や情報の移動がますます加速され、効率化が進む社会状況の中で、ある意味で時代に逆行しているとも言える舞台芸術に何ができるか。それは、社会に対して健全な批判精神を持ってこそ生まれる公共的な価値、精神の公共事業としての「公益」を、芸術を通して追求・実践することではないかと考えています。
2019年の活動継続検証を経た後、私たちは、金森の指揮のもと、地域活動をこれまで以上に展開し、国際的発信も続けてまいりました。人員も予算も増えることのない中ではありましたが、私たちにとっては何よりも大切な、すべての根幹である芸術創造に妥協なく挑み続けることで、国際/地域の両輪で、上記の「公益」をできる限り追求・実践してきたつもりです。その成果は、毎年の活動評価はもちろん、先般のレジデンシャル事業実施における芸術監督任期更新等に関する有識者会議でも「Noismが今後も新潟で発展していく上で、金森監督の役割は非常に重要。引き続き率いてもらうことが望ましいと、委員でも意見が一致した」という判断になった旨が報じられている通り、実績を認められてきたものと認識しております。
中原市長はじめ、私たちの活動を評価される立場の方々にとっては、今の環境/条件でここまでのことができるのであれば、それと同じことをこのままあと7年(金森監督の任期上限の2032年まで)続けてくれればそれで良い、とお考えなのかもしれません。
しかしながら、この後、どれほど意義のある作品を生み出していこうとも、どれだけさまざまな活動で評価を得ようとも、金森監督の任期の上限に伴って、Noism Company Niigataの活動は消えてなくなるというのであれば、私たちはどこに向かって献身すれば良いのでしょうか。
もちろん、Noism0&Noism1 のメンバー、そして専属スタッフは全員、個人事業主として公益財団法人新潟市芸術文化振興財団と1年毎の業務委託契約を締結しているのみで、そもそもそれ以上の保障が何かあるわけではありません。世界的に見ても、舞踊家はその時々の状況の中でカンパニーを移籍したり、時にはフリーランスになったりしてそのキャリアを積み重ねていくことも少なくありません。しかしこの国では、劇場専属の舞踊団として年間を通して生活を保障され芸術創造に妥協なく挑み続けることのできるカンパニーは、ここ新潟にしか存在しないのです。
だからこそ、Noism Company Niigataの活動に希望を見出し、多くの人が新潟市へ移り住んでまいりました。それは今この瞬間に所属している私たちだけに限らず、これまで21年間、Noismで活動してきた150名以上の舞踊家・スタッフたちの様々な想いと貢献によって形作られてきたものです。そしてその活動は、私たち個人の思惑を超えて、新潟市在住か否かにかかわらず、広く市民の財産=公益と言えるようにようやくなり始めた矢先なのではないかと感じています。だからこそ、私たちNoism Company Niigataは、今後もここ新潟で、その可能性を追求・実践していきたいと望んでいます。
2.レジデンシャル制度に基づく事業の芸術監督任期上限(2期10年)の撤廃を望んでいます。
金森も、Noismの設立当初から「劇場文化100年構想」と主張してきた通り、いずれは「Noism=金森穣」という状況を脱して次のステージに向かうことが、今後のNoism Company Niigataの、そして新潟市の文化の成熟には必須であろうと考えています。創作の現場を共にする中で、身体表現や技術にとどまらず、Noism Company Niigataが大切にしてきた根幹の理念を次の世代へと継承していくことを重要な使命ととらえ、この活動を継続的に担い、発展させていける若手舞踊家・振付家の育成にも注力しています。しかしながら、今この状況で私たちを率いていく芸術監督として最大限の力を発揮できるのも、金森穣をおいて他にないことは私たちが身をもって知っています。
Noismという劇場専属舞踊団の仕組みを介して、世界中からさまざまな人が集まり、ここ新潟で行き交うことで、新たな文化が生まれ、根付いていくこと。Noismという劇場専属舞踊団の運営は、そうした理念と情熱を次の世代に伝えていく、壮大な文化創造の実践だったはずです。新潟市が制定したレジデンシャル制度は、そのような文化創造を、りゅーとぴあという公共劇場を拠点に継続して行なっていくのだという決意表明ではなかったのでしょうか。ひとつの文化を定着させることは一世代だけで成し得ることではありません。私たちが今触れることのできる芸術文化を考えても、クラシック音楽は1500年、クラシック・バレエは400年、能楽は600年以上の年月をかけて、洗練されてきました。私たちはそのように長い年月をかけて受け継がれてきた先人の遺産の上に立って「現代の文化」を享受しています。それらはいずれも一朝一夕で文化となったわけではありません。その理念や情熱が多くの人に共有され、継承されて行くことで、文化は育まれます。一過性の流行ではなく、一人のスターの存在によって成立するのでもなく、文化として確立し、根付いていくことを保証する環境づくりが必要です。今この時代を生きている人たちが、次の次の世代まで続くビジョンを持って取り組み続けていかなければなりません。ここで育まれてきた成果をどのように受け継いでいけるか。その活動の内容ではなく任期を理由にまったく新しい人/カンパニーと取り替えること、そしてその任期が上限10年であることは、ここまで新潟市が投じてこられた多大なる時間、エネルギー、税金、それらを無に帰すことになりはしないでしょうか。
以上が、Noism Company Niigataメンバー・スタッフの想いです。
また、私たちは、金森が提言したその他の課題と改善策=「レジデンシャル舞踊団として専用スタジオを有していないこと」「年々増えていく事業数に対して財団職員の人数が増えないこと」「外部スタッフに依存しなければ継続できないレジデンシャル事業のこと」についても、その問題意識を共有し、少しでも状況が改善されることを願っています。
あらためて、レジデンシャル事業のより良い運営のために、これらの課題の改善にご尽力いただけないでしょうか。あらゆる新制度がそうであるように、その認知・成熟・活用には、それなりの時間と、さまざまな困難が伴うものだと思います。私たちが拠点としている「劇場」という場所は、対話のために開かれた場であると考えています。提言をすべてそのまま実現することが難しい事情がさまざまにあることも拝察いたします。それでもなお、ここ新潟で生まれ育んでこられた劇場専属舞踊団であるNoism Company Niigataの未来は、このまま金森監督の任期とともにあっさり失われて良いものなのかどうか、対話の場が生まれることを望んでいます。ぜひ市長のご見解をお聞かせください。
また、この意志と要望について、Noism Company Niigata一同で直接お伝えしたいと考えております。ご多忙とは存じますが、是非とも面談の機会を設けていただけますよう、重ねてお願い申しあげます。
2026年1月12日
Noism Company Niigata
メンバー・スタッフ一同











