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劇的舞踊『ラ・バヤデール』ロシア・サンクトペテルブルク公演

2018年11月21日、ロシア・サンクトペテルブルクのAlexandrinsky Theatreで、Noism劇的舞踊『ラ・バヤデール―幻の国』を上演しました。
11月17日~27日にかけて開催中のInternational Festival of Arts – DIAGHILEV. P.S.から招かれての公演です。
9回目の開催となる今年のフェスティバルでは、マリウス・プティパの生誕200年を記念して“PETIPA. P.S. 2018”の特別プログラムが組まれ、Noismの『ラ・バヤデール』はそのオープニングを飾りました。
21世紀における「プティパの影響」を考察しようという考えのもとに、プティパが最初に振付けたバレエ作品を、現代の振付家が新たな解釈で創った作品たちが選ばれたこの特別企画。
Noism『ラ・バヤデール』に続き、The Yekaterinburg Theatre『The Girl with Porcelain Eyes』(コッペリア)、The Norwegian National Ballet『Epic Short』(Sleepless Beauty project)、The Ural Opera Ballet『Paquita』、The South African troupe of Dada Masilo『Giselle』の上演や、マッツ・エック振付作品『Giselle』『Sleeping Beauty』の映像上映、プティパ振付作品ガラ公演、コンサート、パブリックトーク、展覧会等も予定されています。
プティパ振付の『ラ・バヤデール』初演は、1877年のサンクトペテルブルク。世界中に数ある『ラ・バヤデール』の中から、今、Noism(金森版)が選ばれ、初演の地で上演できることは、我々Noismにとって何より光栄なことです。
 

11月18日、新潟を早朝に出発し、22時間以上の移動を経て、サンクトペテルブルクに到着したのは現地時間で同日の夜22時過ぎ。日本とは6時間の時差です。
ホテルに向かうバスの中から、ロッシ通りの向こう側にAlexandrinsky Theatreが見えました。

 

会場となったAlexandrinsky Theatreは、1824年に開場した、ロシア最古の劇場のひとつです。サンクトペテルブルクの中心街ネフスキー通りに面し、1896年にチェーホフの『かもめ』が初演されたことでも知られています。
建築家カルル・ロッシによる設計で、劇場の裏通りは「ロッシ通り」と呼ばれ、通りの長さは220m、幅は22m、左右の建築の高さが22mと統一されていて、同じスタイルの建物が続く様子は独特の雰囲気。この通りには、ロシア最高峰のワガノワバレエ学校もあります。
 


エカテリーナ女帝の像のあるオストロフスキー広場から、劇場の正面を臨む。
 



翌朝、早速スタッフが劇場入りし、9月に新潟を出発した舞台美術や衣裳の搬入からスタート。
 


一方、出演者は、劇場の舞台が公演に向けて仕込作業中のため、初日は市内にあるThe St Petersburg State Academic Leonid Yacobson Ballet Theatreのスタジオでのリハーサルです。
 


夕方には、La Parsonne Ballet Magazineからの取材があり、金森と出演者3名(井関佐和子、中川賢、貴島豪)がインタビューに応えました。
この日、もともと劇場側のスケジュールの都合で深夜3時までを予定していた舞台仕込ですが、リクエストしていた機材が揃っていなかったり、不具合があったり…で作業は遅々として進まず。
何事も予定通りに行かないのは海外公演ではよくある事態ですが、この後、スタッフは本番まで文字通り不休の調整に追われることに…。
 


そんな中でも、次々と押し寄せる地元テレビ局や連邦カルチャーテレビ、文化雑誌の取材に、フェスティバルへの関心の高さが伺えました。
インタビューでよく問われたのは、「プティパ版から何をどう変えたか?」と「Noismの特徴は?」「21世紀の日本のバレエとは?」
フェスティバルの趣旨からこのような問いが出てくることは当然ですが、これも『ラ・バヤデール』がどのような作品かを熟知しているロシアの観客とそのメディアだからこそ。
また、日本においては、劇場専属で活動しているということはNoismの大きな特徴のひとつですが、ロシアではそれは当然のことなので、取り立てて語られることではありません。その大前提のもとに、世界の舞台に立って、作品について語ること、カンパニーの哲学とめざすところを語ることは、我々Noismが「新潟から世界へ」と謳っている、まさにその実践であることを強く感じました。
なかでも、NoismメソッドとNoismバレエに集約されるその身体性と、舞台における空間認識については、メディア関係者や観客問わず、誰もがその洋の東西の融合をすぐに察知し、Noismの大きな特徴として語られることは流石としか言えません。
 



公演当日、続々と集まってくる観客。バルコニーも満席で、1階フロアには補助席も設置されました。
結局ギリギリまで照明の作業が続き、定刻の20分押しで開演。
 




休憩中のロビーの様子。劇場が社交場として機能していることがよくわかる風景。
 


出演者全員でのカーテンコール。
観客の反応は、日本ともルーマニアともまた大きく異なり、さすが本場。
見巧者が多い印象で、シーン毎に拍手やブラボー、カーテンコールでのスタンディングオベーションもあるものの、やみくもに「熱く」歓迎するのとは違って、良い意味で距離を取って作品を観定めていることが伺える反応でした。
フェスティバルの方の話では、「これまで観た中でも、長く印象に残る『バヤデール』だったと思う」と言う評論家の方もいらっしゃったとか。
追って舞台評が出るのを楽しみに待ちたいと思います。
 

公演の後、フェスティバルのディレクターNatalia Metelitsaさんからは、2020年に再びNoismを招聘したいという打診をいただきました。
現時点でNoismの活動が決まっているのは2019年8月末まで。
その後の活動がどうなるか、今まさに問われているこの時に、ロシアの地で、我々の活動がまたひとつ足跡を残し、更にその未来を求めてくださる方がいることは、何よりの励みです。
今回の公演の実現のために尽力してくださったすべての方々に心から感謝して、再びまたこの地で新たなNoismの姿を示せるよう、我々は新潟で、敢闘いたします。
 

リハーサルの様子を取材・紹介した現地の番組の一部は、こちらでもご覧いただけます。
(舞台リハーサル映像・金森のインタビュー等あり。すべてロシア語)
 

◆NTV.RU
На сцене Александринского театра показали «Баядерку» на японский лад
 

◆TOPSPB.TV
Фестиваль «Дягилев. P.S.» открылся спектаклем «Баядерка» японской труппы Noism
 

◆TVKULTURA.RU
Спектаклем “Баядерка” японской труппы Noism открывается фестиваль “Дягилев. P.S.”

私たちはNoismの活動を応援しています。