Noismバレエミストレス真下恵が『箱入り娘』創作の日々の中からお届けする小噺、「ハコ噺」。
ある時は演出振付家の隣でメモをとり、またある時には音響卓を操作して音を出し、さらには舞踊家たち一人一人に客観的視点からアドバイスし、《かかし王子》の楽譜を片手に拍子を数え…リハーサルを見つめ続けてきたバレエミストレス。
8月1日まで続く公演の様子を、ミストレスだからこその目線で時折綴ります。
「ハコ噺」第3話 2015.06.05
いよいよ世界初演を明日にひかえた『箱入り娘』です。
昨日は「フォトコール」が行われました。
今回も、2004年の創設当初からNoismを撮り続けてくださっている写真家の篠山紀信さんがいらしてくださいました。
そして今回も、篠山さんは自ら舞台上に上がり、舞踊家の間をぬうようにして撮影する独特なスタイルでたくさんシャッターをきっていかれました。
幕が降りた後、「いや~またなかなか面白いの創ったね。こういう作品は”子ども”が観るといいね。」と篠山さん。
舞踊家たちにはいつも以上の緊張が見られ、しかしそれぞれにその緊張感の中で新たな自分のキャラクターの方向性、深みを見出したのではないでしょうか。
さて、「もう初日迎えるのにまだハコ噺2話だけってどういうことだ?」と、急かされているバレエミストレスです。
えーと、ではひとつここで
「これを知っていたら少し違った視点で箱入り娘を鑑賞できるマニアック情報」
をいくつかご紹介します。
その1「照明」
照明には人一倍こだわることで有名な演出振付家・金森穣です。
今回もスタジオBの天井には吊れるだけの照明機材がありったけ吊られております。
そして照明変化の数は約1時間の公演で165回。
つまり単純計算しますと平均して約20秒に1回はなにかしら照明が変わっているわけです。
その変化のタイミングを照明さんは舞踊家の動きをみて覚えるのですが、Noismの複雑な動きを覚えるのは至難の技。
そこに容赦なく穣さんは照明変化の数を増やしていきます。
ちなみに照明の16のきっかけは「うつぼの動き」です。
その2「箱」
そう、箱入り娘の箱です。この箱の材質を決めるまでにどれほど舞台監督さんが頭を悩ませたことか・・・。
なるべく薄くて、なるべく軽くて、でも中で踊っても壊れない丈夫なもの。
「そんなものはこの世の中に存在しないですよ・・・。」
舞台スタッフによる汗と涙の結晶の赤い箱にご注目ください。
その3「かつら」
これまでにも何度かNoism公演ではかつらをつけて踊ってきましたが、今回も何人かの舞踊家はかつらをつけて踊っています。
これが汗をかくとすぐ取れてしまうんです。
しかも床に頭をこすりつけたり、頭をブンブンまわしたり。
それはもちろんとれないようにしっかり固定することも大事なのですが、いかにとれないように考えながら踊るかも大事なんですね。
衣裳でもかつらでも、踊り難い中で最大限自分の動きを魅せられる方法を舞踊家は学ばなくてはなりませんね。
そんなところにも着目しながら『箱入り娘』をご覧いただけたら、また違った発見もできるかもしれません。
Noismバレエミストレス 真下恵