2019年10月から11月の4週間にかけて鳥取で開催中の「BeSeTo演劇祭26+鳥の演劇祭12」のプログラムのひとつとしてお招きいただき、Noismの『Mirroring Memories―それは尊き光のごとく』を上演してきました。
BeSeTo演劇祭は、日本・中国・韓国の三カ国持ち回りで、1994年以来政治状況がどんなに困難な中でも毎年開催されてきた演劇祭です。
三カ国の演劇人が集まって、それぞれの国の首都でもある開催地Beijing、Seoul、Tokyoの頭文字をとって命名されましたが、今では日本開催はその拠点を東京から鳥取に移し、東京のToは鳥取のToになりました。
BeSeTo演劇祭の日本委員会代表である、演出家の中島諒人さんが率いる「鳥の劇場」をメイン会場として、今年12回目を数える鳥の演劇祭との一体開催です。
鳥取駅から車で30分程のところにある山間の温泉地でもある城下町「鹿野」に、日本・中国・韓国、そしてフランス・イスラエル・フィンランドの舞台人が集まりました。
3年前のBeSeTo演劇祭日本開催では、Noismは鳥取県米子市で劇的舞踊『ラ・バヤデール―幻の国』を上演しており、2回目の鳥取での公演です。
今回の会場となったのは、鳥の劇場から車で5分程のところにある廃校になった小学校、旧小鷲河小学校の体育館に特設された劇場。山が近く、すぐそばに川も流れるとても気持ちの良い環境です。
スタッフが会場に到着すると、グラウンドでは、朝から地域の方々がゲートボールに熱中しておられました。
体育館に組まれた舞台美術と客席を覗いて、「これはすごいねぇ!こんなの初めて見た!」とのこと。新潟から来たことをお話しし、ぜひ公演をご覧いただければ!とお誘いしました。
120席程度の客席は、ほぼ満席。カーテンコールでもブラボーが出るなど、とても良い反応をいただきました。
中国と韓国のBeSeTo演劇祭国際委員の皆さんや、同じ週末に他演目を上演中の国内外の舞台人、地元の方々、子どもたち等々、非常に多様な顔ぶれの客席だったと思います。
上野、新潟、目黒での公演を経て、今シーズンからの新メンバーも加わった新たなキャスティングでの『Mirroring Memories』を見届けようと、新潟をはじめ、様々な地域からNoismの公演を観るために鳥取まで駆けつけてくださった方もいらっしゃったようです。
初日の終演後には、BeSeTo演劇祭の日本委員会代表で、鳥の劇場芸術監督の中島諒人さんと、金森穣によるアフタートークも開催されました。
2日間の公演は、いずれも暖かい拍手に包まれて無事終了しました。
終演後には、演劇祭のメイン会場である鳥の劇場で、この週末に作品を上演した日中韓の各カンパニー出演者、スタッフ、地元のお客さん等が一堂に会してのウェルカムパーティが開かれ、公演をご覧くださった方々から、直接いろいろな感想や応援のお声を聴かせていただくことができました。3年前に新潟でもBeSeTo演劇祭を開催した際にお迎えした韓国や中国の懐かしい顔ぶれとの再会も。
決して「便利」ではないかもしれない土地で、これだけたくさんの方々が集い、舞台芸術を介して時間を共有していることの豊饒さ。しかもその顔触れが非常に多様であることに、とても元気をいただきました。
中島さんをはじめ鳥の劇場の皆さんが、ここ鳥取の地にしっかり根を張って、世界とつながる活動を10年以上続けて来られたからこそ実現していることだと思います。
鳥取駅前には演劇祭の開催を謳う旗がはためき、鳥の劇場の確かな足どりを感じました。
やはり、日本の豊かな劇場文化の可能性は、地方にこそある。劇場とは、地方都市が直接世界とつながることができる拠点となり得る文化発信基地なのだ、と確信することができました。
我々Noismも、2022年8月末までの活動更新が決まったこの時期に、鳥取に来ることができたことに深く感謝しています。
新潟に戻り、いよいよ一か月後に迫った新作ダブルビル公演に向けて、再始動です。
今度は我々の本拠地新潟で、皆様をお迎えできるのを心待ちにしています。