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REPORTS

Noism2 舞踊アウトリーチ2023

2021年度から行っているNoism2メンバーによる舞踊のアウトリーチ事業。

今年の春も計8校の新潟市内の小学校を訪問させていただき、授業の一環としてレクチャーとパフォーマンスを行いました。

 

まずは地域活動部門芸術監督の山田勇気からNoismとはどんな集団なのか。劇場とはどういうところなのか説明があります。

Noismは、日本で唯一の劇場専属舞踊団であること。舞踊家は踊りの専門家であり、踊りを通して皆さんと感動を分かち合ったり、私たちの生活が豊かに楽しくなるように、社会貢献活動をしていること。

劇場には、「照明」「音響」「衣裳」などの様々な職業の人がいて、舞台を作っていることなどをお伝えしました。

 

踊るためには、基礎がなければ踊ることができません。Noismには「Noismメソッド」と「Noismバレエ」独自の訓練法があり、このトレーニング方法をNoism2メンバーの実演も混ぜながらレクチャーしました。

▲Noismメソッド

 

 

▲Noismバレエ

 

Noismではこうした日々のトレーニングを通して、常に多方向の動きを意識し、力の拮抗した、緊張感を保った状態である「張りのある身体」を追求しています。この「張りのある身体」のデモンストレーションとして、Noism初期の代表作『NINA―物質化する生け贄』の基本にもなっている“NINAおこし”を実演。

首のうしろだけを支えられた状態で、まっすぐな姿勢のまま後ろに仰向けの体勢で倒れ、またそのまま仰向けの状態で起き上がってくる動き。舞踊家の「張りのある身体」に子どもたちからは驚きの声があがりました。

▲NINA起こし「張りのある身体」

 

レクチャーのあとは、実際にNoism2によるアウトリーチ特別プログラムでパフォーマンス。

今回上演したのは、Noism2定期公演vol.12『Complex~旧作と新作による複合』(2021年)・『R.O.O.M.』(2019年)より抜粋。

1曲目の踊りは、「怒り」、「喜び」、「解放」などの言葉から作った作品、2曲目の踊りは、「ただの”生命”としてうごめく”不気味な”身体」を追求した作品、と簡単な作品解説をした後、これから鑑賞する子どもたちに向けて、踊りの見方に正解はないので、今日は感じるままに楽しんでくださいと伝えてパフォーマンスが始まります。

 

▲新潟市立南万代小学校でのパフォーマンス

 

1曲目は心臓の音から始まり、エネルギーを爆発させるような踊りが続き、2曲目の電子音が響きます。普段見慣れないような動きに子どもたちも釘付けで、集中して舞台を観てくれていました。

 

パフォーマンスのあとは、実際に「張りのある身体」の体験。

レクチャーでも実演したNINA起こしと「張りのある身体」を保っている1人を4人で持ち上げるリフトを体験してもらいました。

実際に体験した子どもたちは、昂揚感に満ちた表情をしていました。

 

▲「張りのある身体」NINA起こし 南万代小学校

▲「張りのある身体」リフト 中野山小学校

 

最後は「距離感」を掴むという感覚を体験。

舞踊家は踊っている最中、「距離感」を掴むことを大切にしています。自分以外の他者やモノとの距離感を測り続けながら、身体をコントロールし、空間を把握する。その感覚を研ぎ澄ませます。

今回体験してもらうのは、Noismの『春の祭典』(2021年)という作品で出てくる椅子から立ち上がって前に数歩歩いて、後ろを見ずに戻って椅子に座るというシーン。

 

▲南万代小学校

 

一見簡単そうに見えるこの動きですが、椅子と自分との距離感を掴むのはなかなか難しく、うまく元の位置に戻って座れません。

それでも何人かの子どもたちは距離感を掴むことに成功していました。

積極的に手を挙げてやりたいと思ってくれる子どもたちも多く、大盛り上がりで体験は終了しました。

 

授業の最後にNoism2メンバーに質問タイム。

「どうしたら身体が柔らかくなりますか」、「憧れの舞踊家はいますか」、「食事はどのように気を使っていますか」など、たくさんの質問があがりました。

なかには、「Noismには、どうやって入れるのですか」「何歳から入れますか」などの質問も。

舞踊家という職業が、子どもたちにとって将来目指す職業になっているのなら、それほど光栄なことはありません。

毎回子どもたちの質問には、改めて考えさせられるものがあり、Noism2メンバーも、改めて自分自身と向き合い、自分の言葉で自分のやっ ていることを伝えていました。

 

子どもたちと対面したとき、溢れるばかりのエネルギーがありました。Noism2メンバーを見る目は真っ直ぐ強く、今この瞬間を焼き付けているように見えました。

私たちNoismも、子どもたちの真っ直ぐで純粋なまなざしと反応にとても刺激を受けました。

今回の子どもたちの反応をみて、舞踊は言葉がなくとも人と人をつなぐ力があるのだと感じました。

 

子どもたちの感想を拝見させていただくと、ありがたいことに、「またNoismをみたい」、「また来てください」「今度は劇場まで見に行きたいです」という内容の感想がありました。

どんなきっかけだとしても、劇場に行きたいと思う気持ちが生まれることは、劇場文化を育てていく上で大切なことだと思います。

そして劇場に実際に足を運んでみることで、何か気付くことがあるかもしれません。

Noismが日本で唯一の劇場専属舞踊団であること、その劇場専属舞踊団が新潟にあること。Noismは新潟市内で活動しています。皆さんの近くにいる舞踊団です。

最初から劇場で見るのはハードルが高くても、アウトリーチを通して、劇場にも行ってみたい。Noismの舞台を見てみたい。と1人でも多く思っていただけたのなら幸甚です。

 

新潟市内で、まだ訪問させていただいたことのない小学校もあります。いずれ、新潟市内の小学校は全て訪問させていただけるようにこれからも、アウトリーチ活動を続けていきたいと思います。

各学校の先生方、ご協力誠にありがとうございました。

私たちはNoismの活動を応援しています。