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REPORTS

Noism2によるアウトリーチ事業

2021年からはじめた小学校への舞踊アウトリーチ事業。2022年は春・秋合わせて新潟市内の小学校計22校にNoism2が訪問してきました。

春は、2022年5月25日から6月3日にかけて、12校。秋は、2022年11月4日から11月11日にかけて10校を訪問し、授業の一環としてレクチャー&パフォーマンスを行いました。

 

 

▲大形小学校

 

まず、Noism2リハーサル監督の浅海侑加から、Noismで普段行っているトレーニングや、今回ご覧いただく作品について説明します。
身体を用いてさまざまなことを表現するのが舞踊家。プロフェッショナルな舞踊家としての身体を追求するため、Noismでは「Noismバレエ」、「Noismメソッド」といった独自の方法を用いてトレーニングを行っています。これらのトレーニングや身体性について、写真やNoism2メンバーによるデモンストレーションを交えながらお伝えしました。

また、Noismに関わっている人々も紹介。舞踊家だけでなく、「音響」「照明」「衣裳」などを担う、たくさんの人々が関わって初めて舞台は出来上がっているということもお伝えしました。

 

▲岩室小学校 Noismメソッドの紹介

 

そして、浅海からのレクチャーのあとは、実際にパフォーマンス。
今回の授業で上演したのは、開港5都市景観まちづくり会議2017新潟大会で特別パフォーマンスとして発表した『砕波(さいは)』という作品。砕ける波と書いて『砕波』。太鼓芸能集団 鼓童の「Daraijin」という音楽に合わせ、日本海の荒波を連想させるリズミカルでパワフルな踊りに、どの学校でも児童たちは集中して舞台に観入っていました。

 

▲大形小学校 Noism2による『砕波』のパフォーマンス

 

「張りのある身体」とは?

生のパフォーマンスを鑑賞したあとは、児童の皆さんが参加する体験WSの時間。Noismでは日々のトレーニングを通して、常に多方向の動きを意識し身体の各部位を拮抗させることで、緊張感を保った状態である「張りのある身体」を追求しています。この「張りのある身体」のデモンストレーションとして、Noism初期の代表作『NINA―物質化する生け贄』の基本にもなっている“NINAおこし”を実演。それは、立った姿勢のまま、首のうしろだけを支えられた状態で、まっすぐな姿勢のまま倒れ、またそのまま床に仰向けに倒れた状態から、まっすぐ起き上がるというもの。子どもたちは思わず歓声を上げ、体育館がたちまち熱気を帯びてきます。次にリフトです。「張りのある身体」を保っている1人を4人が押し合うことで持ち上げます。どちらの体験も、実際に体験する子どもは驚きと高揚感に満ちた表情を浮かべていました。

 

▲大形小学校 “NINA起こし”体験の様子

 

▲大形小学校

 

「距離感」を測る

例えば日常生活において、私たちは何気なくいろいろな動きをしています。人混みの中で人と人とがぶつからないのは、無意識にすれ違う人との距離感を測っているとも言えます。舞踊家は踊っている最中、その感覚を研ぎ澄ませます。自分以外の他者やモノとの距離感を測り続けながら、身体をコントロールし、空間を把握する。「距離感」を掴むことは、とても大切な身体感覚といえるでしょう。

Noismの『春の祭典』という作品では椅子から立ち上がって前に数歩あるき、後ろを見ずに戻って椅子に座るというシーンがあります。一見簡単そうに見えるこの動き。椅子と自分との距離感を掴めるかな、と子どもたちは挑戦してみますが、なかなかうまく座れません。5つの椅子を奪い合うかのような大盛り上がりで体験は終了しました。

 

▲大形小学校

 

授業の最後には、子供たちからの質問の時間も。
「Noismに入ったきっかけは何ですか?」、「踊っていて一番楽しいことは何ですか?」、「どうしたらそんなに頑張れるんですか?」等々、たくさんの質問があがりました。浅海をはじめ、Noism2のメンバーも気持ち新たに舞踊に向き合えるような、そんな学びの多い時間でした。

 

地域活動部門の一環として行われているアウトリーチ事業。

子どもたちがNoismを観るまなざしは新鮮さと驚きの色に満ちており、身体の可能性や舞踊の面白さを身体感覚として得るきっかけになったのではないかと思います。

そして私たちNoismも小学生の純粋なまなざしと反応にとても刺激を受けました。

 

地域に根差すことは容易ではありません。しかし誰もがもっている身体を媒体に、身体の豊かさを共有することが、日々身体と向き合うNoismの責務のひとつとも言えます。

私たちは舞踊に可能性を感じています。

そのことをたくさんの人々と共有できたら嬉しいです。

地域に根差す活動として、アウトリーチ活動をこれからも続けていきたいと思います。

各学校の先生方、ご協力誠にありがとうございました。

私たちはNoismの活動を応援しています。