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実験舞踊vol.2『春の祭典』/『FratresⅢ』プレビュー公演(豊橋)

2020年12月12日、穂の国とよはし芸術劇場PLATでNoism0+Noism1+Noism2実験舞踊vol.2『春の祭典』/『FratresⅢ』プレビュー公演が開催されました。
本来は、6月に新潟で初演の後、札幌、東京での公演を経て、豊橋で本公演を行う予定でした。新型コロナウイルス感染症の影響により世界中でほとんどすべての舞台公演が中止・延期となる中、この公演も延期を余儀なくされましたが、幸いなことに、新潟で6月に公開リハーサル、8月にプレビュー公演を経て、今回、豊橋でもプレビュー公演として上演できることになりました。
 

この状況下では、どこまでのことが可能なのか予測のできないことが多かったため、開催できるとしても「本来の演出は伴わない形での上演」となることは決まっていましたが、今できる限りのベストをご覧いただけるよう、準備を進めてきました。
りゅーとぴあの休館中は一時的に通常どおりのリハーサルができない時期はあったものの、大幅な「中断」はなく、日々の稽古と創作活動を続けてこられたことが、何より今回の上演につながっていることは間違いありません。
それは偏に我々が地方都市・新潟を拠点に、公共劇場専属の集団として活動してきたからに他なりません。
皆劇場に近いところで暮らしているため、公共交通機関を利用せずに劇場に集い、同じメンバーで毎日朝から晩まで稽古のできる環境があること。そして、たとえ「本公演」はできなかったとしても、状況に応じて、さまざまな形で作品をご覧いただく機会を持てたこと。
この1年は、そのためにご尽力くださった全ての皆さんに心から感謝してもしきれない日々でした。
 

9月からは新メンバーも加わって、18歳から46歳まで、25名の舞踊家が所属することになったNoism Company Niigata17年目のシーズン。
新潟市洋舞踊協会や、和楽器集団ぐるーぷ新潟とのコラボレーションなど、有難いことにホーム新潟での公演は続いていましたが、県外での大きなツアー公演は2月の森優貴/金森穣ダブルビル埼玉公演以来です。
 


 

季節の変化とともに再び感染が広がっていることに大きな不安を覚えながらも、できる限りの対策を行ってメンバー一同で豊橋入りしました。
穂の国とよはし芸術劇場PLATは、2013年4月に開館した豊橋市の劇場です。
今回公演を行った主ホールは、700席程を擁しながらも舞台の熱気や緊張感が客席に伝わりやすい親密感のある空間が、舞踊や演劇の上演についてよく考えられた心地よい劇場でした。
新幹線で東京から1時間半、名古屋から20分という東三河の中心地に、駅から直結で建てられたPLATは、主ホールの他にも、200席程度のアートスペース、演劇・舞踊・音楽の稽古のための複数の創造活動室、研修室など、まさに文化活動・交流のためのプラットホームとして街の文化交流の中心を担う場所になっていました。館内の交流スクエアには、毎日、自習するたくさんの学生の姿が。
 


 

公演は1回限りではありましたが、このような中でも多くの方が劇場に集ってくださったことが、本当に嬉しかったです。
1席飛ばしではない、隣の人の存在を間近に感じる客席を見たのは本当に久しぶりでした。
ご来場くださった方々には、長い列に並んでいただいての靴裏消毒、検温、手指消毒…とさまざまなご協力をいただいたうえに、大きな声で感想を分かち合うこともできない…という制約下ではありましたが、皆さんからのさまざまな思いに支えられて、この公演があることを痛感しました。
感染が拡大し続ける中で、いろいろな葛藤を抱きながらもご来場くださった方々、劇場へ来るのは断念したけれど遠くから応援してくださった方、きっといろいろな方がいらっしゃったことと思います。
 


 

穂の国とよはし芸術劇場PLATでは、このコロナ禍で、これまでとは違った層のお客様が増えておられるのだそうです。
おそらく、これまでも興味はあったけれど実際には劇場までは足を運ぶことのなかった方々が、「蜜」を避けることで希薄になってしまった心や身体の何かを埋めるように、劇場にいらっしゃるのではないか、と。
今回の公演が、ご来場くださった方々にとって、この困難な時代を乗り越える糧となることができたなら、我々も本望です。
この公演の実現のために尽力してくださったPLATの皆さん、本当にありがとうございました。
またそう遠くないうちに、再びここで公演ができることを願っています。
 


 

晴天の豊橋から新潟に戻ると、低い空に雲が広がり、雪混じりの冷たい雨が降っていました。来週からは寒波もやってくる模様。いよいよ新潟らしい冬の到来です。
『春の祭典』/『FratresⅢ』は、来年夏に、モスクワ・チェーホフ国際演劇祭での公演を皮切りに国内でも「本公演」として上演する予定です。それまでは大切に寝かせて、この冬は、また新たな作品に挑みます。

私たちはNoismの活動を応援しています。