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柳都会vol.17 廣川玉枝×金森穣

金森穣をホストに、毎回多彩なゲストを迎えて開催する公開講座・柳都会(りゅうとかい)。
 

今回は、17回目の開催にして初の女性ゲスト、デザイナーの廣川玉枝さんをお迎えし、能楽堂で開催しました。
廣川さんは、強く美しい女性を想起させるファッションブランドSOMARTA(ソマルタ)のデザイナーであると同時に、グラフィックデザインやサウンドクリエイト、ビジュアルディレクション等を手がけるクリエイティブ集団SOMA DESGINを率いています。
 

以前からNoismの公演をご覧くださっていましたが、今回7年ぶりに上演することになったNoismの初期代表作『NINA—物質化する生け贄』の衣裳の全面リニューアルを手がけてくださいました。
 


 

前半は廣川さんによるレクチャー。
「身体の夢 ファッションデザインの拡張」と題し、廣川さんがデザイナーとしてキャリアをスタートさせた背景や、自身のブランド〈SOMARTA〉と〈SOMA DESIGN〉立ち上げの経緯について、これまでの廣川さんの代表作をまとめた美しいスライドを見ながら話を伺いました。
 

私たちは皆、毎日さまざまな服を着て過ごしています。
何を着るかは、好みはもちろん、その時の気分や、自分が周りにどう見られたいのかということを意識して選んでいます。
それは自分の精神を他者に対して視認させるものであり、同時に、自分の有り様を演出する自己表現です。
そんな「服」の持つ根源的な魅力に惹かれ、服飾の道に進んだ廣川さん。
スライドには、古くから世界各地で存在してきた刺青やボディペインティングの資料もあり、それらの装いの文化への関心から”第二の皮膚”というコンセプトが生まれ、SOMARTAの代名詞として、レディ・ガガやマドンナも愛用することで知られる「Skinシリーズ」が誕生したのは必然だったことを、参加者の皆さんも感じられたのではないでしょうか。
また、学生時代から、舞踊等の舞台芸術はもちろん、レオナルド・ダ・ヴィンチや、人体解剖学に強く興味をもったこと等、一貫して「身体」と「芸術」へのアンテナとセンスが優れていたことが、お話しの端々から伝わってきました。

「Skinシリーズ」が、その芸術性とオリジナリティを高く評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵されたことにも納得です。
 

「Skinシリーズ」をはじめとする廣川さんの作品には、360度縫い目のない無縫製ニットがよく使われます。
参加者からの質問にもあがりましたが、ニットのデザインを立体的に考える思考の持ち主ということは、昔から編み物に親しみがあったのかと思いきや…
廣川さんとニットとの出会いは、服飾の専門学校を卒業し、就職した会社でニットのデザインを担当することになったのがきっかけとのこと。
前後左右さまざまなパーツを組み合わせて縫製することで立体的なパターンを製作する「洋服」とは大きく異なり、ニットは1本の糸からどのように編み上げていくかでその形を考えます。
そのつくり方が、「すごく面白くて、自分にはとても合っていた」と廣川さん。
 


 

しかし、それらは廣川さん1人の頭の中だけで生まれるのではなく、工場の職人さんとの対話を通して、新しい技術やデザインが広がっていくことをお話しくださいました。
実はそれはとても重要で、デザイナーも職人も、どちらか一方では成り立たず、互いの専門性と職能あってこそ進化していくものです。
 

デジタル技術が発達した現代社会では、誰もが簡単に「創作」のできる時代になりました。
たとえば3Dプリンターがもっと普及すれば、誰でも自分の好きな服をいくつかのボタン操作だけで安価に創れてしまう時代はそう遠くないうちにやってくるかもしれません。
そんな時代に、「デザイナー」や「職人」の存在意義はどこにあるのか。
 

これまでに受け継がれてきたデザインを進化させ、育てること。
仮に今、陽があたっていないものだとしても、これからの時代に必要なものを見極め、きちんと進化させておくことが、デザイナーの仕事だと思う、と廣川さん。
”第二の皮膚”のコンセプトは服以外にも派生し、自動車、彫刻、車椅子など、ファッションに留まらないさまざまなもののデザインに広がっています。
例えば、ほとんどのニット製品が無縫製になる未来がやってきたとき、そこで敢えて「無縫製ニットの可能性」を提案するのは、その技術と文脈を理解し、見つめ続けてきたデザイナーにしかできない仕事なのかもしれません。
「デザイナー」と聞くと、自分の中から溢れる創作欲によってものを生み出しているようにも思われがちですが、過去から学び、未来へつないでいくことも大きな仕事のひとつであることがよくわかるお話でした。
 


 


 

講座の終盤、廣川さんから、「Noismと一緒に仕事をしたことで、改めてSkinシリーズの面白さと奥深さを感じ、さらに研究を進めたいという気持ちが湧いてきた」とのお話が。
我々とのクリエーションが、廣川さんの新たな刺激にもなっていることを、とても嬉しく思います。
 

参加者の皆さんからは、「Skinシリーズ」の進化系でもある『NINA』の衣裳についての質問もたくさんあがり、期待値の高さが感じられました。
来週に迫った『NINA』新潟公演。
新しく生まれ変わった「NINA第二の皮膚」にも注目してご覧ください。
 

▼NINAの公演特設ページはこちら
http://noism.jp/nina_2017/

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